poetoh

大島憲治の詩とエッセイ、フォト、自由律俳句を紹介。既刊詩集『イグナチオ教会通り風に吹かれる花のワルツ』(書肆山田) 『東京霊感紀行』(竜鱗堂) 『センチメンタルパニック』(私家版) 『荒野の夢』(蝶夢舎)『シャドーボクシング』(蝶夢舎)

詩集『シャドーボクシング』より

を 傾いだ鳥のちいさな頭を突き刺さった空の小枝を凍った雲を地下深く広げられた翼を 十三歳の冬の精嚢から天井を飛ばした晩をミルクがほとばしった夜空を モルタル校舎の西階段を駆け上がった白いソックスを グランドの蒼天から落ちて来た踊りまくっている1…

FCLP

FCLP 低くたれこめた雲のなかを爆音が轟くここは厚木 横田 横須賀を結ぶ米軍制空権トライアングルゾーン晴れているなら灰色の軍用機の姿が見えるはずだ昼休みの小学校のすぐ上を途切れることなく爆音が過ぎていく会話や笑みを封殺しながら 見上げても見…

キャバーン

キャバーン だれもが特別な存在として日々息を吸いごはんをかっこみ 通りをかっ歩した引っ込み思案もあきらめやすいことも天から贈られた勲章のはずでわたしたちは何者かとなるべくいつかを思った 時は過ぎいつかはいつかであり続けた特別な存在はどこへ行っ…

放課後の終わりに

放課後の終わりに 三階建て鉄筋コンクリートの校舎とある小学校の一階東北角の一室ぼくの昼はそこで生きている放課後児童指導員それがいまのぼくの仕事 月曜から金曜まで放課後が始まり 放課後が終わるまで喧噪という旅のなかで ぼくは 宝物をさがしている …

巨人

巨人 ぼくのなかに極小のぼくがいるそれが物質なのか非物質であるのかわからないおそらくはその中間に存しているのではとぼくは踏んでいるきのうの夜 初めてその存在に触れたのだがそいつはグッタリと弱っていたのだった 極小のぼくのことをキョクボクと名付…

山頂

山 頂 阿夫利神社奥宮へ向かって中国人が呪文を唱えてる無事、無事、無事、人生無事擦過する日本語が交じって吐息がたなびく ぼくは透視する冷たいぬかるみを踏み込んできた登山靴の中のかわいそうな小指たちをぼくはキスをする太陽の前に並んだ霜柱 そのむ…

不時着

不時着 しあわせはフシアワセよりも多くのものを見ていない しあわせときどきフシアワセフシアワセときどきしあわせ わたしたちの凡庸は郊外の横断歩道に生きながらえている ときに暗喩と直喩で成った人生で砂漠のまんなかに不時着してしまった者を人はフシ…