poetoh

大島憲治の詩とエッセイ、フォト、自由律俳句を紹介。既刊詩集『イグナチオ教会通り風に吹かれる花のワルツ』(書肆山田) 『東京霊感紀行』(竜鱗堂) 『センチメンタルパニック』(私家版) 『荒野の夢』(蝶夢舎)『シャドーボクシング』(蝶夢舎)

すべては無題に尽きる

 すべては無題に尽きる

   

バスキアが刷き塗りたくる色は
直感ですらないかもしれない。
色がバスキアを塗りたくっている。
色は対象を示すものではなく
バスキアそのもの。
バスキアという生命体を
バスキアという社会的存在を
色が真っ先に占拠していく。

バスキアが手で辿る形象は
太古と幼年、路上にリンクしている。
洞窟やノート、ビルの狭間を横切り
手の動きはカンバスへとやってくる。
布や紙や木や鉄に絡めとられた形象は
根源や郷愁へ向かっているわけではない。
現在を弾き飛ばす未見のゾーンを
拓きながら
見る側へ浴びせかけるのは
瞬間と動機のコラージュ。
自由という牢獄を辿っているのだ。
そこには仄かに呪術の匂いがする。
黒い大陸からの二重螺旋のヒモが
アメリカにジョイントされる。

スタイルは一貫しているが
どの作品も新しい。
憑依と即興の競演。
コトバと記号とシンボルが
意味からの乖離を象り
進化も後退もなく
無題は
正確に緻密に何かを描いている。

 

Inspired by

バスキア 展  -メイド・イン・ジャパン-