poetoh

大島憲治の詩とエッセイ、フォト、自由律俳句を紹介。既刊詩集『イグナチオ教会通り風に吹かれる花のワルツ』(書肆山田) 『東京霊感紀行』(竜鱗堂) 『センチメンタルパニック』(私家版) 『荒野の夢』(蝶夢舎)『シャドーボクシング』(蝶夢舎)

一色海岸の部屋

一色海岸の部屋

 波の音が今日の最果てまで
やってこないかなあ

風がこのカラダを
今すぐ骨だけにしてくれたらなあ

砂の上に何もかもが透明な部屋

さっきみたブルーノ・ムナーリ
潔く矩形と成った「額もまた」が
さっそく壁に掛けられる

部屋のゆかに腰を下ろして
ぼくは砂のなかの風を眺める

耳が海にノイズを流している
目が臼をまわす音をとらえている
地球がピカピカと表面を
発信している

波打際から透明なイヌが
からからと走ってきて
ぼくの胸に飛び込む

なまぬるい!
鼻の穴が笑う

部屋はそのままにして
じゃあ帰りましょう
砂と話し込みながら

海にもう夕陽はいらないな

2018/05/13