私は稲垣足穂の自信がどこからくるのかを考えてしまう。彼には世俗的な幸福など眼中にない。人に、文壇にどう思われようと、平気なのだ。彼の日常は、ミミズに水をやり、ネズミの通路に小さいパンを置き、庭のびわの木のびわは鳥に残してやれと云い、猫の世話をし、お米のとぎくずは庭に撒いて雀にやると聞く。芸術家はかくあるべきと思う。お金も名声も要らない。よい作品を書きたいと思う。
『虚空 稲垣足穂』折目博子
私は稲垣足穂の自信がどこからくるのかを考えてしまう。彼には世俗的な幸福など眼中にない。人に、文壇にどう思われようと、平気なのだ。彼の日常は、ミミズに水をやり、ネズミの通路に小さいパンを置き、庭のびわの木のびわは鳥に残してやれと云い、猫の世話をし、お米のとぎくずは庭に撒いて雀にやると聞く。芸術家はかくあるべきと思う。お金も名声も要らない。よい作品を書きたいと思う。
『虚空 稲垣足穂』折目博子