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大島憲治の詩とエッセイ、フォト、自由律俳句を紹介。既刊詩集『イグナチオ教会通り風に吹かれる花のワルツ』(書肆山田) 『東京霊感紀行』(竜鱗堂) 『センチメンタルパニック』(私家版) 『荒野の夢』(蝶夢舎)『シャドーボクシング』(蝶夢舎)

『魔術師』モノクロ映像に酔う

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 イングマール・ベルイマン『魔術師』をamazon primeのネット配信で観る。馬車が夜の森を抜けて行く冒頭のシーンからその彫り深い白黒映像に引き込まれてしまう。そういえばリマスタリングされた『野いちご』が以前、NHKBSで放映されていたが、白黒映像が「新品」のように明晰に蘇されていた。撮影はともにグンナール・フィッシャー。『第七の封印』の撮影監督もそうだ。

 宮川一夫のモノクロとは随分異なるように思うが、上映したもので比較しなければどこがどう違うのか正確には分からない。邦画のモノクロ映像は何か平坦でボケ感があるように感じられるがどうだろう。風景や空気感が影響していることは充分あるだろう。『魔術師』では室内、家具、調度品、衣服、それらのディテールが白黒映像で彫琢されたかのように映り込んでいる。

 魔術師役マックス・フォン・シドーの目のアップシーンがあるのだが、モノクロを超えて宝石のように美しかった。森のなかを行く馬車とシドーの目が忘れがたい作品だ。