poetoh

大島憲治の詩とエッセイ、フォト、自由律俳句を紹介。既刊詩集『イグナチオ教会通り風に吹かれる花のワルツ』(書肆山田) 『東京霊感紀行』(竜鱗堂) 『センチメンタルパニック』(私家版) 『荒野の夢』(蝶夢舎)『シャドーボクシング』(蝶夢舎)

構え

 

 構え

 

デタラメへの引き金に指を掛け
彼はカラシニコフ一挺分の存在となる
この重さが彼の仮装だ
指を引けば殺すことだって
ほくそ笑むことだって
かなえられる
発射というアクション
当たればそれは
魔法から覚めるように
「撃たれた」という力学を生む
撃たれたのは日常ではなく
日曜から日曜までの魔法
目を瞑ったままでは
デタラメという結果は残せない
デタラメはデタラメ領域に狙いを定める
オートマティックは決意であり
一語一語も決心だった
等身大からあふれず
如何なる現実からも離れない
閉じられているということは
確かなのか
内にいないということは
本当なのか
暴れられないという
黙する構えが頂点だ
われわれはいま頂点を直線にしている
腹這いになり あるいは
岩山の一角に銃身を乗せ
引き金に指を掛ける
難解さに耐え切れなくなる
それはしかたのないことだから
叫びも失っても
驚くほど寂寞な世界が
目の前にあるらしく
弾が外れたとしても
瞬間をどこまでも曳きながら
飛んでいく
コトバの外側に方向はあった
軌跡さえ彼を残さないだろう

引いちゃったんだな
無事?
ではないでしょう