……わたしの興味は口唇期的な快楽と苦痛のみなぎる閉じた空間を、粘着質で窒息するようなイメージの組合せと衝突によって堅固に造型し上げることにあっただけで、べつだん自分の中に抱えこんでいる何か切実なモチーフやらを表現したかったわけではない。わたしは詩のロマン主義とはまったく無縁の人間だ。ただ言葉を、ひたすら言葉を書きつけて、不意にそこになまなましい手応えを備えた空間が開けさえすればよい。
松浦寿輝「同居」
短篇集『そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所』より
……わたしの興味は口唇期的な快楽と苦痛のみなぎる閉じた空間を、粘着質で窒息するようなイメージの組合せと衝突によって堅固に造型し上げることにあっただけで、べつだん自分の中に抱えこんでいる何か切実なモチーフやらを表現したかったわけではない。わたしは詩のロマン主義とはまったく無縁の人間だ。ただ言葉を、ひたすら言葉を書きつけて、不意にそこになまなましい手応えを備えた空間が開けさえすればよい。
松浦寿輝「同居」
短篇集『そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所』より