ここに来て12平均律などの呪縛からやっと解かれ出したんです。そういう音楽がほとほと嫌になっちゃってね。家に2台あるピアノも1台は調律するのを止めて、どんどん狂っていけばいいと思っているんですよ。塩とか塗って錆びさせたらどうなるんだろうなんて考える。弦の間にコーヒー豆を落としてみるとか、最近はそんなことばかりやっているんです。内部奏法もケージのような繊細なものではなく、石をバーンと転がしてみたりとかね。だから、10歳のときに草月会館で観たような、ああいうところに戻りつつある。あと20年くらいは生かしてもらって、武満さんを追いかけないといけない(笑)。
坂本龍一、武満徹との50年を振り返る
「武満徹の電子音楽」の著者・川崎弘二が訊いた過去と現在